国際学術誌『Biomedicines』に腸内細菌叢の性差に関する当社の論文が掲載されました

日本人の腸内細菌叢には男女で違いが存在
-大規模な日本人腸内細菌叢データセットを用いた包括的な解析-

当社の畑山らの研究チームは、日本人の大規模な腸内細菌叢データセットを用いて、日本人集団の腸内細菌叢における男女の違い(性差)を調査しました。その結果、腸内細菌叢には性差が存在し、且つそれが年齢の影響を受ける可能性があることを明らかにしました。また、同データセットを用いて12の疾病と関連する可能性のある腸内細菌を男女別に調査した結果、各疾病と関連する可能性のある腸内細菌の多くは、男女間および年代間で異なることを示しました。

本研究では、腸内細菌叢には性差が存在することを大規模なデータセットを用いて世界で初めて科学的に明らかにしました。この研究成果は、腸内細菌叢と疾病の関連性に関する研究や、腸内細菌叢をターゲットとする疾病の予防や治療のためのアプローチに関する研究を大きく前進させることにつながります。

研究チームは、日本人の大規模な腸内細菌叢データセットを用いて、疾病に罹患していない日本人集団(男性2,136人、女性4,327人)の腸内細菌叢における性差を年代別に調査しました。その結果、腸内細菌叢には性差が存在し、且つそれが年齢の影響を受ける可能性があることが明らかになりました。20代から50代までの各年代間では、腸内細菌叢の多様性の面で性差の特徴が異なっていること、60代と70代では性差は小さくなる傾向があることがわかりました。性別で違いがある腸内細菌の菌属としては、男性ではFusobacteriumMegamonasMegasphaeraPrevotella、およびSutterellaが多い傾向、女性ではAlistipesBacteroidesBifidobacteriumOdoribacter、およびRuthenibacteriumが多い傾向がありました(図)。次に、12の疾病(潰瘍性大腸炎、2型糖尿病、胃炎、逆流性食道炎、腎臓病、肝臓病、不整脈、狭心症、緑内障、気管支喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎)と関連する可能性のある腸内細菌を男女別・年代別に調査しました。その結果、各疾病と関連する可能性のある腸内細菌の多くは、男女間および年代間で異なりました。本研究の結果は、腸内細菌叢と疾病との関連性、および腸内細菌叢を標的とした疾病予防・治療法に関する研究を行う際には、年齢と性別を考慮する必要があることを示唆しています。

本研究は、国際学術誌『Biomedicines』(2023年1月27日付)に掲載されました。
https://www.mdpi.com/2227-9059/11/2/376


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