ディスバイオシスと疾病の関連性

ディスバイオシスと疾病の関連性


腸内細菌叢のバランスが乱れた状態を示す言葉「ディスバイオシス(dysbiosis)」。


ディスバイオシスは、さまざまな疾病と関連すると考えられています。具体的には、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、代謝性疾患(メタボリックシンドローム、糖尿病、非アルコール性脂肪肝など)、自己免疫疾患(喘息、アレルギーなど)、精神・神経系疾患(自閉症スペクトラム、うつ病、アルツハイマー型認知症など)との関連性が示唆されています。


今回は、ディスバイオシスが疾病を引き起こすメカニズムなどについてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.有益な菌が減少し、有害な菌が異常増殖する
  2. 2.抗生物質や高脂肪食なども原因に
  3. 3.ディスバイオシスを予防・治療するには?


有益な菌が減少し、有害な菌が異常増殖する


健康な腸内では、有益な菌を含む多様な腸内細菌が適切なバランスを保つことによって、免疫の恒常性が維持され、有害な菌の増殖を妨げると同時に炎症の発生が抑制されています。


また、腸管の上皮層では細胞同士がタイトジャンクションにより密着して並び、さらに粘液層には粘液や抗菌物質が豊富に存在していて、有害な物質や菌の透過や感染から防御されています。
(コラム「病原菌やウイルスから体を守る腸管免疫系」参照)

  病原菌やウイルスから体を守る腸管免疫系 外来異物に対する独自の生体防御機能「腸管免疫系」。今回は、腸管免疫系の基本構造や機能から、近年の研究で明らかにされてきた、腸内細菌が腸管免疫系に及ぼす影響などについてご紹介します。 腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」


これに対し、ディスバイオシスは、有益な菌が減少したり、有害な菌が異常増殖したりするといった、腸内細菌叢のバランスが乱れた状態です。


ディスバイオシスが進行すると、腸管を保護する粘液が希薄化してバリア機能が低下し、免疫反応が亢進して炎症が起こります。この炎症によって、タイトジャンクションの結合が弱まり、「リーキーガットシンドローム」が引き起こされます。


リーキーガットシンドロームとは、腸の粘膜に穴が開き、菌や菌体成分のリポ多糖類(LPS)が血中に漏れ出す状態のこと。その血液が全身を巡ることで全身性の慢性的な炎症が生じ、さまざまな不調や疾病を引き起こすのです。


dysbiosisを引き起こす原因


抗生物質や高脂肪食なども原因に


このようなディスバイオシスの原因のひとつとして考えられるのは、病原菌の感染や免疫システムの何らかの異常によって生じる病原菌の増殖です。


病原菌が増殖すると、腸管内に炎症が起き、侵入する微生物に対する宿主の抵抗性が損なわれることが知られています。実際に、ディスバイオシスにより病状が進行すると考えられている病気のひとつ、炎症性腸疾患(IBD)の患者の便からは病原性細菌が多く検出されたと報告されています。


また、その他の原因として抗生物質の使用が挙げられています。


経口摂取する抗生物質の多くは、一時的または長期的に腸内細菌叢を変化させ、特に繰り返し使用することで腸内細菌叢が不安定な状態となり、抗生物質に耐性をもつ病原菌が増殖した状態になります。


そして、食事も原因のひとつとして挙げられ、短期的にも長期的にも腸内細菌に影響を与えるとされており、特に、高脂肪食、高糖質食、高たんぱく質食といった偏った食事や、食物繊維の少ない食事により、腸内細菌叢のバランスが変化することがわかっています。


たとえば、高脂肪食や高糖質食により大腸菌の割合が増加すること、低食物繊維食や高脂肪食で腸内細菌叢の多様性が低下すること、高たんぱく質食で腸内細菌の産生物組成が変化して毒性化合物の産生量が増加することなどが報告されているのです。


その他、過小な身体活動量、概日リズムの乱れなどもディスバイオシスの原因になりうるとも言われています。


なお、ディスバイオシスの原因として遺伝的影響も挙げられていますが、腸内細菌叢においては遺伝よりも食事の影響のほうが大きいと考えられています。


ディスバイオシスを予防・治療するには?


現在は、このようなディスバイオシスに対する予防や治療についても研究が進められており、特に食事療法が有効と考えられています。


プロバイオティクス(有益な菌)は、腸内細菌の遺伝子発現や代謝に大きな影響を及ぼすことがわかっているほか、日常的な摂取がディスバイオシスの予防につながる可能性も示されています。


また、プレバイオティクスの摂取は、腸内細菌のエサとなることで腸内細菌叢を急速に変化させるため、個人の腸内細菌叢の構成などからパーソナルに設計された食事療法が有望視されています。


食事療法以外の新たな治療方法として、便移植(FMT)も注目されています。


FMTとは、健康なドナーの便を患者の腸に移植し、腸内細菌叢を改善させる方法です。2013年にクロストリジウム・ディフィシル感染症の治療に高い効果があったことから、それ以降、国内外で臨床研究が進められており、炎症性腸疾患や大腸がんのほか、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの腸内細菌が関連すると考えられている代謝性疾患の治療方法としても期待されています。


さまざまな疾病を引き起こすとされるディスバイオシス。腸内細菌叢のバランスを乱さないように、規則正しい生活を心がけ、感染症の予防に注意することと同時に、やはり大切なのは日々の食事を見直していくこと。健康維持の基本は、個人の腸内細菌叢に合った食生活なのです。



当社が提供している腸内細菌叢の検査・分析サービス「SYMGRAM」(医療機関向け)および「健腸ナビ」(一般個人向け)では、大腸がんや認知症、アトピー性皮膚炎など、約30種類の疾病リスクを網羅的に分析。

疾病リスクだけでなく、リスクを下げるための食品情報、酪酸や乳酸を産生する菌の割合やバランス評価など、きめ細やかなレポートで皆様の健康をサポートします。

SYMGRAM

健腸ナビ





関連記事

Service

タグ一覧

ページトップへ戻る