肥満との関係に見る日本人の腸内細菌

腸内細菌が、ヒトの健康に関係していると広く認識され始めたのは、2006年のジェフリー・ゴードン博士らの研究が発端といわれています。

「無菌(腸内細菌がいない)マウスに、肥満の人の腸内細菌叢を移植すると、マウスが肥満化した」という研究報告が、国際的な総合科学ジャーナル『Nature』でゴードン博士らにより発表され、同時に「肥満の人の腸内細菌はFirmicutes(ファーミキューテス)門に属する菌が多く、Bacteroidetes(バクテロイデーテス)門に属する菌が少ない」ということも報告されました。

実は腸内細菌の99%が、FirmicutesBacteroidetesProteobacteria(プロテオバクテリア)、Actinobacteria(アクチノバクテリア)の4つの門に属しているのですが、肥満の人には、そのうちの2つの門(FirmicutesBacteroidetes)について、特徴的な偏りが認められたのです。

その偏りとはつまり、Firmicutes門が多く、Bacteroidetes門が少ないというものですが、この2つの門の比率を示すF/B比が高いほうが、肥満になりやすいということも報告されました。

その後も、同様の報告が海外から多数発表され、F/B比と肥満の関係は世界的に有名になりました。

腸内細菌が、ヒトの健康にとって、肥満のように体型を左右するほどの関係性にあるという発表は、研究者に大きなインパクトを与え、その後の腸内細菌叢の研究が急速に発展したといわれています。

しかしF/B比に関する海外の研究報告は、日本人には当てはまらないという発表も出てきました。

日本人277名を対象とした腸内細菌叢の解析において、F/B比とBMIが相関しないことが、2019年に日本消化器病学会の機関誌『Journal of Gastroenterology』で報告されました。

さらに同年、青森県岩木町に住む男女1001名から得られたデータからは、FirmicutesBlautia(ブラウティア)属の菌が多いほど内臓脂肪面積が少ないということが判明しました。

このBlautia属の菌は、日本人の腸内細菌叢に占める割合が他の国の人に比べて多い菌であることもわかっています。

先の研究による「肥満の人の腸内細菌はFirmicutes門に属する菌が多い」「F/B比が高いほうが肥満になりやすい」という報告とは一致しない結果となったのです。

一方、2016年には国際的なDNA研究に関するジャーナル『DNA Research』で、腸内細菌叢は国ごとに特徴があることが発表されており、日本人の腸内細菌叢は他国の人と比較しても特徴的であることがわかっていました。

つまり、Firmicutes門が肥満と関係していることや、Bacteroidetes門には肥満を抑制する菌がいることは多くの報告がありながらも、日本人では必ずしも「F/B比が高いほうが肥満になりやすい」ことはないため、おそらく日本ならではの腸内細菌叢や食習慣、遺伝的要素が関連し、腸内細菌と肥満との関係はF/B比だけでは語れないようなのです。

だからこそ、日本人の腸内細菌叢と健康・疾病の関連を紐解いていくには、日本人のデータを参照することが大切です。

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